原告団の日々の活動

薬害教育活動報告~国際医療福祉大学で講義(薬害肝炎九州原告団 山口美智子)

薬害教育活動報告~国際医療福祉大学で講義(薬害肝炎九州原告団 山口美智子)

1 2020年10月7日、福岡県大川市にある国際医療福祉大学にて、『薬害』の講義をしましたのでご報告したいと思います。

今春開設されたばかりの福岡薬学部薬学科(6年制)の一年生約150人の学生の前で話しました。福岡薬学部では「リサーチマインドを持った臨床に強い医療人としての薬剤師」の育成を目標に掲げており、私の講義は、早期体験実習として薬害被害者の話を聴くとの位置付けでした。

2 「薬害が繰り返されない未来に」という演題で、事前に配布したレジュメに沿って話しました。

ちょうどその2日前(10月5日)、C型肝炎ウイルスの発見に対して2020年ノーベル医学生理学賞が贈られた話を冒頭に導入したこともあり、学生の皆さんは、「C型肝炎」に強い関心を持って、最後まで真剣に清聴していたように思います。

3 私はおおむね以下のような話をしました。

(1) C型肝炎とは

  1. 特徴

    C型肝炎ウィルスによって起こる肝臓の病気で、慢性化することが多く、自覚症状 が少なく、気が付かないまま放置してしまうと、20年から30年かけて肝硬変や肝がんへと病状を悪化させてしまう。

  2. 感染者の被害

    被害を4つの負担(精神的負担・肉体的負担・経済的負担・社会的負担)に分けて述べ、私にとっての一番の被害は、2年間300本のインターフェロンの副作用により、一生の仕事と思っていた小学校の教職を退職したことで、社会に生きる意味を失くしたこと(社会的負担)。

  3. 感染経路

    C型肝炎ウィルスは、主に感染者の血液を介して(・感染者から輸血を受けた場 合・同一の注射針や筒を用いた注射を受けた場合・血液凝固因子製剤の投与を受けた場合)感染し、通常の日常生活や社会生活ではほとんど感染することはない。
    特にコロナウィルスとの違いや感染経路の違い等にも触れた。

(2) 薬害C型肝炎とは

  1. 血液凝固因子製剤による感染

    血液凝固因子製剤は、人の血液から作られる医薬品で、私が止血剤として投与さ れたフィブリノゲンは、アメリカの囚人の売血でC型肝炎ウィルスが混入した血液によって製造された血液製剤だった。

  2. 被害の実態

    世界では現在、推定7100万人がC型肝炎ウィルスに感染している。2016年には 約40万人が死亡。世界でも特に多い日本では、C型肝炎患者が推計約150万人。薬害肝炎原告となって救済された人は、未だ2000人余り。

  3. 薬害肝炎訴訟の目的

    目的の一つに「薬害の再発防止」を掲げ、薬害を根絶する最後の裁判と位置づけ、子どもたちの未来には薬害が二度と繰り返されない世の中にと、2002年から全面解決まで5年間闘ってきた。

(3) 私の被害

私自身の被害だけでなく、息子たちの心をも傷つけた薬害肝炎に感染したのは、避けることのできた人災であることを知り、訴訟の原告となった経緯を話した。

(4) DVD(ダイジェスト版)

2003年4月に福岡地裁に提訴してから2008年1月の『薬害肝炎救済法』成立までの5年間を取材された映像を見ていきましょう。

そこには、私が出産した病院の新人だった薬剤師が記録した手控え書により、フィブリノゲン投与の証明が可能となり、原告になれたことが映し出されている。

(5) 薬害肝炎との闘いを通して伝えたいこと

  1. 薬の害(薬害)にあうということ

    私の人生を変え、息子たちの心をも傷つけたのは、無神経に製造され、野放しに販売されてきたフィブリノゲンという薬だった。私がC型肝炎に感染したのは「運命」ではなく、避けることのできた「人災」だったのだ。

    私は33年前にC型肝炎に感染してから、病気と闘い、治療と闘い、裁判を闘い、政治家たちへの要請行動を繰り返し行った。また、全国各地の街頭でビラ配りをしたり、マスコミを通して世論へ訴えたりと闘いの連続でした。

  2. 再発防止

    厚労省の中庭にある『誓いの碑』の写真を見て頂きたい。薬害が繰り返されてきている実態がある。

    福岡、東京、大阪、名古屋、仙台という主に5地域の原告団から構成される薬害肝炎全国原告団は、薬害を二度と発生させないために、真に実効性のある医薬品等行政を監視評価する第三者組織創設を求めて活動してきた。

    長い期間を経てやっと設置されることになり、この第三者組織の9人の委員の中に薬害被害者が2人加わったが、今後の薬事行政への意見が反映されなければならない。

4 最後に私は、「人間としての尊厳」として、以下の言葉で講義を締めくくりました。

「私は、この薬害肝炎との闘いの経験を語ることで、命の大切さや人間としての尊厳を伝えることができます。

皆さんも今日は、「薬害肝炎」について薬害被害者の生の声を通して学ばれたことと思います。何事も「知る」ことから、「人の痛みを自分の痛みとして感じる」感性や想像力がみがかれていくことを期待します」

5 講義後、2名の学生より質問も受けましたのでご紹介しましょう。

Q1アメリカでは直ぐに承認取り消しがあったのに、日本ではそのままウィルス混入の血液製剤が使われ続けたのか?

A国と製薬企業との癒着が原因の一つであると思う。

Q2薬剤師になっての私たちに望まれることは?

A薬害の被害者にも加害者にもならないでください。何か(おかしいな?)と思ったら、立ち止まる勇気や上司に報告する勇気をもってください。
なお次週の「薬害」の時間に、グループディスカッションしてレポートにまとめる予定ということです。