薬害肝炎とは

C型肝炎とは

肺がんによる死亡者数の年次推移

C型肝炎とは、C型肝炎ウィルスの感染によって起こるウィルス性肝炎のことです。

肝炎は、肝臓の細胞が壊れて肝臓の働きが悪くなる病気です。肝炎のほとんどはウィルスの感染によって起こるウィルス性肝炎です。ウィルス性肝炎は、ウィルスの種類によって、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎などに区別されます。

かつては、肝炎には、伝染性肝炎(流行性)肝炎と、血液を介して感染する血清肝炎の2種類があると考えられており、前者がA型肝炎、後者がB型肝炎と呼ばれていました。ところが、1970年にB型肝炎ウィルスが発見されたことから、A型肝炎でも、B型肝炎でもない肝炎ウィルスが存在することが明らかになりました。そのため、1988年にC型肝炎ウィルスが発見されるまでは、C型肝炎は、「非A非B型肝炎」と呼ばれていました。

B型肝炎とC型肝炎は、A型肝炎と異なり、慢性化することが多く、肝硬変、肝がんなどの主な原因になります。

血液凝固因子製剤とは

日本における輸血後肝炎発症率の年次別推移

血液凝固因子製剤は、人の血液から作られる医薬品です。

人の血液中には、出血をしたときに血液を固めるのに必要な血液凝固因子という成分が、何種類も含まれています。「フィブリノゲン」や「第Ⅸ凝固因子」と呼ばれているのは、血液凝固因子の一種です。これらの血液凝固因子が欠けると、怪我をしたときや手術をしたときに出血が止まりにくくなります。その様な場合に、欠けている血液凝固因子を補充し、出血を止めるために使用されたのが、血液凝固因子製剤です。本来は、生まれつき血液凝固因子が欠けている先天性の病気に対する治療法として使用されてものですが、実際には、その有効性が明らかではない後天性の病気にも広く用いられていました。

薬害肝炎訴訟で問題となっているのは、「フィブリノゲン製剤」や「第Ⅸ凝固因子製剤」と呼ばれている血液凝固因子製剤です。これらの血液凝固因子製剤は、数千人から2万人以上もの供血者による血漿(けっしょう)をプールしたもの(プール血漿)から作られていたため、供血者の中に1人でも肝炎ウィルス感染者がいるとプール血漿全体が汚染されてしまう危険性がありました。そのため、1人ないし2人の供血者の血液から作られる血液製剤(クリオプレシピテート)や輸血に比べて、本格的に肝炎ウィルスに汚染される危険性の高いものでした。

このことは、1960年代から指摘されており、1977年には、アメリカのFDA(食品医薬品局)が、フィブリノゲン製剤の承認を取り消しました。しかし、わが国では、被害の原因となったフィブリノゲン製剤(フィブリノゲン-ミドリ、フィブリノゲンHT-ミドリ)は、1964年から1988年ころまで、第Ⅸ凝固因子製剤(クリスマシンなど)は、1972年から1986年まで、販売されていたのです。

血液凝固因子製剤を使用する必要性はあったのでしょうか

血液凝固因子製剤のような医薬品については、副作用の危険性があるからといって、ただちに製造・販売を禁止すべきだとまではいえません。その副作用を上回るだけの有効性がある場合には、医薬品を使用する必要性が認められることもあるからです。

それでは、フィブリノゲン製剤や非加熱第Ⅸ因子製剤には、そのような必要性はあったのでしょうか。たしかに、先天性フィブリノゲン血症や先天性第Ⅸ因子欠乏症(血友病B)などの生まれつき血液凝固因子が欠けている病気には、血液凝固因子製剤を投与する必要性があったかもしれません。

しかし、後天的な出血性疾患や新生児出血症などの病気については、必ずしも血液凝固因子製剤の有効性は明らかになっていませんでした。また、これらの病気については、1人ないし2人の供血者の血液から作られるクリオプレシピテートや、新鮮血、新鮮凍結血漿の輸血などの代替的な治療方法もあったのです。したがって、あえて危険な血液凝固因子製剤を用いる必要性はありませんでした。

アメリカでは、1977年に、フィブリノゲン製剤の有効性が疑わしく、より肝炎感染の危険性の少ない他の製剤が存在することを理由に、フィブリノゲン製剤の承認は取り消されていました。ところが、日本では、集団感染例が発覚した後の1987年になってようやく旧厚生省が、旧ミドリ十字に対して、その適応症を先天制定フィブリノゲン血症に限定する内示を出したにすぎません。旧厚生省が、適応症を低フィブリノゲン血症に限定したのは1998年です。

薬害肝炎訴訟の目的

まず、国と製薬会社に法的責任があることを明確にすることです。血液凝固因子製剤の投与を受けたことによってC型肝炎ウィルスに感染してしまった被害者の数は、正確には分かっていません。しかし、1980年以降にフィブリノゲン製剤の投与を受けた患者は約29万人で、そのうち1万人以上がC型肝炎を発症したと言われています。これほど多くの人がC型肝炎ウィルスに感染してしまったのは、国と製薬会社が、血液凝固因子製剤の危険性を警告し、先天性の血液凝固因子欠乏症に適応症を限定するなどの適切な措置を怠ったことが原因です。このような国と製薬会社の法的責任を明確にすることが、被害の救済や真相究明の出発点になります。

つぎに、薬害肝炎に感染してしまった被害者の救済です。国と製薬会社には薬害肝炎被害を引き起こした法的責任があるのですから、被害者の被った損害を賠償しなければならないのは当然です。その上で、被害者が安心して生活を送ることができるようにするためには、C型肝炎の治療体制の確立、生活保障の実施・充実などの恒久的な対策が講じられることが欠かせません。

第3に、薬害肝炎被害の真相究明と薬害の再発防止です。このような大規模な薬害被害が生じてしまった原因を究明し、被害の実態を明らかにすることが必要です。そのことは、薬害の再発を防止するという目的にもつながります。

最後に、薬害肝炎訴訟をつうじて、血液凝固因子製剤以外の原因によって観戦した200万人を超えるC型肝炎被害の全容を明らかにし、すべてのC型肝炎ウィルス感染者の被害回復を実現することが究極的な目標です。